湿布の香りの正体?清涼感のある成分「カンファー」とは
精油の成分の話 2025.11.12

湿布の香りの正体?清涼感のある成分「カンファー」とは

湿布や冷感スプレーの香りを嗅ぐと、思わず「スーッとする」と感じることがありますよね。
その清涼感のある香りの正体のひとつが、今回のテーマ「カンファー」です。

実はこのカンファー、自然の中にも存在する成分で、日本の樹木である「くすのき」からも得られます。
今日は、そんなカンファーの香りの特徴や、含まれる精油、暮らしへの活かし方まで詳しくご紹介します。

カンファーとはどんな成分?

カンファー(Camphor)は、モノテルペンケトン類に分類される天然の芳香成分のひとつです。シャープで鼻に抜けるような香りが特徴で、多くの人にとって「湿布の香り」として知られています。

天然のカンファーは、主にクスノキ(Cinnamomum camphora)の木部から得られる精油成分として存在し、自然界では植物が外敵から身を守るために合成する成分でもあります。

カンファーの香りの印象と特徴

カンファーの香りは、ひとことで言えばシャープでスーッとする清涼感
ミントやメントールにも似た爽快感がありますが、それよりもややドライで、樟脳(しょうのう)や薬草のようなニュアンスを持ちます。

多くの湿布薬や軟膏などにもこの香りが使われており、香りを嗅ぐと「効きそう」「冷たく感じる」といった印象を持つ人も多いでしょう。

カンファーを含む精油

カンファーは、以下のような精油に多く含まれています。

精油名 カンファー含有量の傾向 香りの特徴
くすのき 高濃度(50%以上の場合も) スーッとした薬草のような香り。清涼感と木の深み
ローズマリー(カンファータイプ) 中程度(20〜30%前後) 力強くシャープ。ハーブらしい刺激感

単離成分としてのカンファーの歴史

カンファーは、古くから世界各地で利用されてきた香気成分です。中世ヨーロッパでは防腐や香料として、中国や日本では「しょうのう(樟脳)」として虫よけや外用剤などに活用されてきました。

天然のカンファーは、クスノキの木部を水蒸気蒸留し、その後ゆっくりと冷却することで結晶化されます。冷却器の水面に浮かんだ白い結晶を網ですくい取り、乾燥させたものが「天然樟脳」として使われてきました。

その後、近代に入ると、マツの精油などに含まれるα-ピネンを原料とした合成カンファーが開発され、大量生産が可能に。現在では、湿布や冷感ジェル、香料製品などに幅広く使われるカンファーの多くが、こうした合成プロセスでつくられています。

くすのき精油と日本の森の香り

日本で「カンファー」といえば、くすのき(Cinnamomum camphoraを思い浮かべる人も多いかもしれません。神社や公園などにもよく見られる大樹で、古くから日本人にとってなじみ深い木です。

くすのきの精油は、採取される部位によって香りや成分が異なりますが、木部から抽出された精油はカンファーを豊富に含むのが特徴です。
清涼感のある香りの中に、どこか懐かしい樹木のぬくもりを感じる香調で、日本産精油の中でも個性が光る存在です。

カンファーを暮らしに取り入れるヒント

カンファーを含む精油は、スッキリしたいときやリフレッシュしたいシーンにぴったりです。芳香浴に使えば空気感がクリアになり、モヤっとした気分を切り替える助けにも。

また、クローゼットや靴箱の消臭・虫よけ目的で、アロマスプレーにして使うのもおすすめです。スプレーを作るときは、エタノールに精油を溶かしてから水で希釈しましょう。

カンファー系の香りは香りが瞬時に感じられる精油なので、ブレンドでは控えめに使うのがポイント。国産ランベンダー、ヒノキ木部などと合わせると、清涼感の中にやわらかさが生まれます。

シャープさを生かしたい時は、国産ローズマリーや和はっかの精油との相性も良いので試してみてください。かなりスカッとした香りになるので濃度には注意して下さいね。

まとめ

「湿布の香りの正体」としても知られるカンファー。現在は合成のものが多く使われていますが、元は自然由来の成分であり、くすのき精油をはじめとした日本の植物にも多く含まれています。

そのシャープな香りの奥には、植物が長い年月をかけて育んできたチカラがあります。香りを通して、そんな植物の個性にふれてみるのも、日々の暮らしを豊かにする一歩かもしれません。

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