d-リモネンだけじゃない?和ハッカに含まれるもうひとつのリモネン
柑橘の皮をむいたとき、ふわっと広がるあの爽やかな香り。
実は、その香りの多くは「リモネン」という天然成分によるものです。
でも、リモネンにはじつは2つのタイプがあるのをご存じでしょうか?
今回は、d-リモネンとℓ-リモネンという2つの異性体の違いや、香りの印象、精油に含まれる植物などを紹介しながら、精油成分の奥深さに触れてみましょう。
- リモネンとはどんな成分?
- リモネンの香りの印象と特徴
- d体とℓ体の違いとは?
- d-リモネンを多く含む精油
- ℓ-リモネンを含む精油
- リモネンの工業利用と香料での扱い
- リモネンの香りを暮らしに活かすヒント
- まとめ
- 次のアクション
リモネンとはどんな成分?
リモネン(Limonene)は、モノテルペン炭化水素に分類される芳香成分で、柑橘類の果皮に多く含まれています。
自然界では、植物が外敵や紫外線などから身を守るために作り出す化合物のひとつです。
リモネンは異性体を持ち、主に2つのタイプがあります:
- d-リモネン:多くの柑橘系精油に含まれる
- ℓ-リモネン:和はっかなど、一部の植物に含まれる
どちらも同じ「リモネン」という名前ですが、香りや働きに微妙な違いがあります。
リモネンの香りの印象と特徴
d-リモネンは、柑橘らしい明るさと軽やかさを感じさせる香り。
グレープフルーツやユズの皮をむいたときに感じる、はじけるような香りの中心にある成分です。
ℓ-リモネンは、同じリモネンでもやや印象が異なり、ミント様の清涼感と植物らしいグリーン調の香りに寄る傾向があります。
アロマセラピーでは、d-リモネンにはリフレッシュや気分の切り替えに役立つ働きがあるとされ、柑橘系精油の明るい印象の中心的な役割を果たしています。
また、d-リモネンには血行を促す働きがあるとされる研究もあり、アロマセラピーで重宝されている成分の一つです。
ただし、酸化によって過酸化物などが生成され、皮膚への刺激やアレルギー反応を引き起こす可能性がありますので、柑橘系精油の取り扱いには注意が必要です。
d体とℓ体の違いとは?
リモネンには、右回り(d体)と左回り(ℓ体)の光学異性体があります。
| 異性体 | 構造 | 含まれる主な植物 | 香りの印象 |
|---|---|---|---|
| d-リモネン | 右回転(+) | 柚子、カボス、イヨカンなど | 明るく、ジューシーな柑橘の香り |
| ℓ-リモネン | 左回転(−) | 和はっか | ミントのような清涼感、ややグリーン |
このように、分子構造のちがいが香りの感じ方に影響を与えるのが、精油成分の奥深さです。
d-リモネンを多く含む精油
d-リモネンは、次のような日本産の柑橘系精油に豊富に含まれています。
| 精油名 | d-リモネン含有率の目安 | 香りの特徴 |
|---|---|---|
| 柚子(ユズ) | 70〜80% | ジューシーでほのかな甘さ、爽やかさ |
| カボス | 70%前後 | ややグリーンでやさしい柑橘香 |
| イヨカン | 80%以上 | 甘みのある華やかな柑橘の香り |
ℓ-リモネンを含む精油
あまり知られていませんが、ℓ-リモネンは和はっかに含まれています。
和はっか精油にはℓ-メントールやℓ-メントンなどが中心に含まれていますが、ℓ-リモネンも成分の一部として含まれ、清涼感のある香りを構成する一因となっています。
d-リモネンとは違った「やわらかくクリーンな印象」を与えるのがℓ-リモネンの特徴です。
リモネンの工業利用と香料での扱い
アロマセラピーでは必要不可欠なd‐リモネンですが、香水や香料の調香の現場では、d-リモネンの揮発性の高さと香りの主張の強さが他の香りとのバランスを取りにくくすることがあり、あえて除かれることも。
精油から除かれた単離成分のd-リモネンは、天然由来の溶剤としても注目されており、洗浄剤、接着剤除去、天然クリーナー、食品香料など、工業用途にも広く使われています。
「精油=そのまま使えばいい」というわけではなく、目的や使い方によって成分の役割や扱い方が変わるのも、面白いところです。
リモネンの香りを暮らしに活かすヒント
d-リモネンを含む柑橘精油は、気分を軽くしたいときや、空間を明るく整えたいときにおすすめです。
冬のセルフマッサージにも重宝します。
アロマスプレーを作って、玄関やリビングにひと吹きすれば、爽やかで軽やかな香りが広がります。
柑橘系の精油は、どんな精油ともブレンドしやすいのでアロマセラピーの入門精油としても使いやすいと思います。
まとめ
「リモネン」と一言で言っても、d体とℓ体では香りの印象や働きに違いがあります。
成分を深く知ることで、香りの個性をより繊細に楽しむことができるはず。
精油を選ぶとき、含まれる成分の細かい表記に目を向けてみることで、新たな発見につながります。
好きな香りで選ぶ日もあってよいけれど、時々成分に特化してみるのも学びが深まって楽しいものです。